今、人気のゲルマニウムと珪素の話
元素の周期律表を作ったメンデレーエフが、将来発見されるべき原子・元素を予測したのは一〇〇年も前のことですが、それから二〇年たって、ウィンクラーという学者が、実際にこの元素を発見しました。ドイツ人だったウィンクラーは、祖国の名をとってその元素を「ゲルマニウム」と名づけました。一九四八年のこと、アメリカのベル研究所の三人の技師が、ゲルマニウムの半導体としての性質を使って、真空管に代わる増幅用のトランジスタ、そして整流用のダイオードを発明した。これによって、ゲルマニウムは一躍、現代文明を築く担い手となりました。ゲルマニウムとは兄弟の元素がシリコン（珪素「けいそ」）で、同じダイオードでもシリコン・ダイオードはゲルマニウム・ダイオードよりも高電圧に耐えるというので、人気はそちらに移り、サンフランシスコの南にあるサンタクララ渓谷地帯に、シリコンを主材料とする半導体製作企業が集中したので、そのあたりは「シリコンバレー」と呼ばれるようになりました。ところで、ゲルマニウムのほうはその後どうなったか。ゲルマニウム水とゲルマニウム浴というのを経験した人はいないでしょうか。ゲルマニウムの意外な性質が発見され、それが健康法として用いられるようになったのです。ただし、それは生きたゲルマニウムでないと効果がないのです。ゲルマニウムには、無機と有機とがあります。有機のゲルマニウムは、人体に入ると、人体の中で不要になったものを捕らえて体外に排出してしまう性質があって、そのため健康になったり頭もよくなったりします。おもしろいことに、有機のシリコンにもそういう働きがあります。シリコンは珪素で、ニンニク、高麗ニンジン、アロエなどには大量の珪素が含まれています。有機ゲルマニウムの抽出に成功した人は、戦争中、石炭に含まれるゲルマニウムを研究していた浅井一彦博士です。有機ゲルマニウムを多量に含んだ水は、古来しばしば「霊水」といわれ、現在でも磐梯山の「五色水」などが販売されています。 |
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