| 元気のでる館広島 ＞ 癒しの館 ＞ 真理探究者 中村天風の世界Ⅱ ◆「水がいっぱい入った壷」に湯は入らない ヨガ修行の村では、三郎は「奴隷」という身分でした。この地の階級制度では、奴隷は羊の下に位置したのですが、三郎は結核を病んでいたため、羊並みに羊小屋で寝ることが許されました。とはいえ、奴隷の身分では聖者と言葉を交わすことはできません。 「お前は助かる。私についてきなさい」と言われて来たのに、一カ月が過ぎても修行は始まりません。聖者は自分のことを忘れてしまったのではないかと考え、ある日、意を決して三郎は聖者の前にひれ伏しました。 「カイロで先生は『お前は大切なことに気づかずにいる』と言われました。その大切なことは、いつ教えていただけるのですか？」 「そなたは、カイロから一緒にきた者だな。私は忘れてはいない。そなたがいつ、教えを乞いにくるか、私は待っていた。だが、お前は教えを受ける準備ができているのか？」 「はい、とうにできております」 「いや、私の目から見ると、まだ準備ができていない」 「お言葉を返すようですが、私の心は修行する準備が整っております」 そこで聖者は三郎に、「壷に水をいっぱい入れて持ってきなさい」と命じました。三郎がそのとおりにすると、聖者がふたたびおごそかに命じました。「その湯を、水の壷の中に入れてみなさい」 「水がいっぱい入っているので湯を注ぐことができません。すぐ、こぼれてしまいます」 三郎が答えると、聖者は言いました。 「その水の入った壷がお前だ。お前の心の中には、くだらない屁理屈がいっぱい詰まっている。心を空にしてきなさい」 大きな衝撃を感じながら、三郎は徐々に素直な気持ちを取り戻し、ようやく聖者から、「後ほど私の部屋へきなさい。赤子のような気持ちで」と言われ、本格的な修行を始めることができたのでした。 ◆動物食から植物食へ 胸に病気を抱えていた三郎は、インドへくるまでは毎日肉を一〇〇グラム、卵六個、牛乳六合など、合計三五〇〇キロカロリーと、食物を多めに摂取していました。ところが、この村では主食は水に浸けた雑穀のヒエでした。おまけにここでは「動くもの」「殺す時に声や音を出すもの」は食べてはいけないという決まりがありました（ニンニクも、引き抜く時に「キューッ」と音が出るため、食べられません）。このような食事では一日一五〇○キロカロリーがせいぜいです。心細くなった三郎はカリアッパ師に尋ねました。 「この程度の食事で大丈夫なのでしょうか？ご承知のとおり、私は病人なのですが」 すると師はこう言いました。 「あの象を見ろ。」年の半分は米の藁を食べ、後は人間が残し室や墓の尻尾を食べている。それだけであの身体を十分に生かしている。お前の体重はあの象の耳の重さにも及ばないではないか。食べ物が気に入らなければ、修行をやめて、ここを出て行きなさい」 仕方なく、三郎は雑穀や野菜のほか、山で採った果物（果物だけはいくらでも自由に食べることができた）などを食べ続けたところ、不思議なことに、カロリーが激減したにもかかわらず、四〇キログラムほどだった痩身の身体が、半年後には二〇キログラムも増えました。「ろくな食事をしていないから、身体がむくんだのではないか」と心配した三郎でしたが、実は確実に健康が回復していたのです。植物食を続けることで、いつしか身体のけだるさば取れ、頭もスッキリし、喀血もなくなりました。この「植物食」－動物性食品をできるだけ減らし、植物性のものを多く摂取する－という考え方もまた、三郎に大きな影響を与えることになりました。 ◆古井戸の中で 三郎はヨガの修行を続けながらも、結核に侵されている自分の身体が、いつも気になっていました。文明社会から離れ、薬もないこの山の中で病が進行し、やがて死を・・・。このことをカリアッパ師に話したところ、「死の恐怖を克服するのに、いい修行方法があるからやってみないか」と言われ、三郎はその行を受けることにしました。ある日、三郎は集落のすぐ外にある水のない古井戸の底に入れられました。夜になると井戸の周囲では野獣が叫び、穴のふちからはヒョウが覗き込んで・・・。大蛇が垂れ下がり、大きな口を開けて迫ってきた時には生きた心地がしなかったと言います。恐怖の一夜が明けると、水と食物がロープにつけられて井戸の底に下ろされました。井戸の外で呪文を唱える声が聞こえます。この呪文が終わる前に食べないと、食物は引き上げられてしまうのです。そして夜にはふたたび猛獣たちが……。 こうして三夜が過ぎ、恐怖と疲労と飢えとで三郎が憔悴しきった時、井戸底にモッコをつけたロープが垂らされました。呪文が唱えられている間に、自分の身体をモッコの中に入れないと、そのまま井戸の底で死ぬことになります。三郎は最後の力を振り絞り、疲労こんばいの身体をモッコの中に押し込みました。 井戸から引き上げられた三郎は、太陽の眩しい光を浴びながら「生きていることの素晴らしさ」をあらためて思い知りました。暗い井戸の底での苦しさを思えば、結核の喀血などは苦しみのうちに入らないと思えるようになり、以後、三郎の結核の我が身を呪う気持ちは次第に静まっていったのでした。そして、この病のために、いずれ死ぬのではないかという恐怖もなくなりました。 |
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英国の辞書に日本語の「霊気」を掲載 |
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| ●心身統一法と財団法人の設立 一九一九（大正八）年、四三歳の中村天風は財産や社会的地位を投げ打って、「統一哲医学会」を創設します。やがて、天風の教えは、東郷平八郎、原敬、後藤新平、山本五十六、松下幸之助、稲盛和夫といった政財界の有力者をはじめ、宇野千代、大仏次郎、北村西望、広岡達朗など、今日にいたるまで多くの知識人、著名人の支持を受け、「天風哲学」として広く世㈹に認められるようになりました。 天風は、各地で開催される講演や夏期修練会などを通じ、一〇〇万人とも言われた会員に人生の生き方を教授する一方で、教義を書物に著し、一九六八 （昭和四三）年一二月一日に逝去するまでその普及に努めました （享年九二歳）。 中村天風が説いた人生道は「心身統一法」と名付けられました。 心身が統一された状態で営まれる生活法は、人間の生命の「ありのままの姿」です（この状態を「心身一如」と言います）。つまり、精神を「精神生命の法則」に、そして肉体を「肉体生命の法則」にそれぞれ順応させるという生活法です。そして、そのためには、①心を常に「積極的」に保つ、②精神を統一する、③身体は自然の法則に適用させる、④身体を訓練して「積極化」する － といったことが必要になってきます。天風の教義は、天風がインドで修行したヨガの各種密法をもとにしつつ、日本人が日常生活を送りながら実践できるように組み立てられています。素晴らしい人生を送るための生き方が理路整然と説かれているのが特徴です。 |
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この辞書は英語を英語で説明する日本の国語辞典に当たるもので、オックスフォード辞書と並ぶ権威。残りは「パチンコ」「霊気」「ワサビ」「そば」「うどん」。これでこの辞書に掲載されている日本語は百二十余りになった。(中略) ヨガなどと並び英国で流行している「Ｒｅｉｋｉ」（霊気）の登場は異色。辞書は「（名詞・日本語）癒しと元気回復のために患者にエネルギーを与えると考えられている治療法」と説明している。新聞、雑誌、書籍、ラジオなど印刷物と会話の中から集めた四億語余りのうち使用頻度の高いものを選んだという (以下略)