花（歌曲）春のうららの隅田川のぼりくだりの船人が 櫂のしずくも花と散る ながめを何にたとうべき 見ずやあけぼの露浴びて われにもの言う桜木を 見ずや夕ぐれ手をのべて われさしまねく青柳を 錦おりなす長堤に くるればのぼるおぼろ月 げに一刻も千金の ながめを何にたとうべき ⇒ 明治思い出の歌へ |
| 日本のシューベルト、滝 廉太郎の名曲、爛漫と桜が咲くにほんの美しい春が浮かびます。 作詞者の武島羽衣の教え子により、隅田河畔の公園に自筆の「花」の歌碑が建っています。 一 うららかに晴れた春の隅田川。上り下りの船を漕ぐ船頭の擢のしづくが、花のように散る。 この美しい眺めは、何にたとえられようか。 二 見ましたか。朝露を浴びて、わたしに話しかけるサクラの木を。見ましたか。 夕ぐれに手をさし出して、わたしを招いてくれるヤナギを。 三 錦に織りあげた長堤に夕闇がせまると、おぼろ月が昇ってくる。 この一刻千金のすばらしい眺めを何にたとえたらよいか 一九〇〇（明治三三）年、瀧廉太郎編の歌曲集『四季』で発表されました。『四季』は《花》武鳥羽衣、《納涼》東くめ、《月》瀧の自作、《雪》中村秋香の詩で構成され、全曲瀧が作曲する。序文に「日本の詩に合せて作曲し、この道に資する」とああります。隅田川は水運の盛んな時代、江戸・東京の幹線水路として荷船や渡船の往来でにぎわった。一方隅田堤は江戸時代から花の名所として知られ、今も花見や夏の花火には見物客や屋形舟がどっと繰り出す。三節の「錦おりなす長堤」とある隅出堤について、小説家永井荷風は「向嶋」の中で、「明治三十一、二年の頃の隅田堤の桜樹は枕橋（現・里苗区役所近く）より遠く梅若塚（現・墨田区堤通）のあたりまで間隙（かんげき）なく列植されていたので、花時の盛観は江戸時代より遥に優れていたと言わなければならない」と書いている。奈良時代には〝花″といえばウメであったが、平安時代からはサクラをさすようになり、〝花見〟といえばサクラの花見のことになりました。朝はサクラの木が土手を行く人に語りかけ、夕暮れにはヤナギが手を差しのべ、夜になればおぼろ月が長堤のサクラを照らし一刻千金の別世界をつくり出すのです。一九〇一（明治三四）年、瀧の卓越した才能が認められ、文部省派遣留学生として三年間の予定でドイツに留学する。ところが二年後に発病し帰国、二三歳一〇ヵ月という短い生涯を閉じました。 江戸時代の寺小屋の話へ、寺子屋や手習いは、お師匠さま一人で経営するのが普通だったが、男師匠が男女子ともに教える、あるいは、男師匠が男子に教える、また、女師匠が女子だけに教える場合もあった。また、夫婦で師匠をして、夫が男子、妻が女子を教える場合もあり、同じ男女共学でも、夫は手習いを教、え、妻は女子に裁縫を教えるというふうに分業する場合もあって、いかにも多様性に富んだ時代らしく一定のきまりはなかった。きまりがなかった理由は簡単で、江戸期の日本には、庶民の初等教育に関する法規のたぐいがいっさいなく、まったく自由放任。江戸庶民を支配していた町奉行所の二九〇人の役人の中に、手習いの担当官は一人もいなかった。誤解のないように書いておくが、庶民の教育を自由にさせようというような積極的窒息思が町奉行所にあって自由放任にしていたのではない。庶民の子供の教育に限らず、民間人にやらせておいて不都合のないことに対してまでクニがいちいち口を出すべきだという発想自体が、幕府にも各藩にも欠けていたのだ。さらに、公平を保つために書いておくと、庶民側にも、自分たちの子供に読み書きを教えるのがクニの仕事だという発想がまったくなく、クニのサービスをほとんど受けない代わりに、江戸市中に住む一般庶民は、所得税も消費税も払う必要がなかったのである。教科書の内容から小学校の授業時間数に到るまで、政府がこまごまと干渉する民主政府と、初等教育を民間まかせにして完全に放任していた封建政府のどちらが良いかを比べるつもりはまったくない。しかし、子供に読み書きを教えることや、子供の服装までオカミにおまかせする代償として、町人が膨大な税金を負担しなくてはならないと知れば、先祖は、はたしてどちらの道を選んだか、人民投票にかけて結果を知りたいところだ。政府が放任したため、誰も学校へ行かなかったのなら問題だが、幕末期には、農村部までを含む広い意味での江戸府内での児童就学率は八〇パーセント以上に達していた。さらに、現在の東京の台東区から港区あたりに相当する江戸の中心地に限定すれば、江戸育ちで手習いに行かない子供は、身分や貧富、性別にかかわらずほとんどいなかった。江戸時代の寺小屋の話Ⅳへ パワーストーン広島 / パワーストーン水晶天然石 次は浦島太郎
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