よく「二度あることは三度ある」といいます。
飛行機事故は、ある時期たてつづけに起こります。
同じような犯罪は繰り返されます。 歴史や社会背景も長い目で見ると同じことの繰り返しです。きわめて似ている物事が続けざまに起こるのはなぜなのか。
イギリスのルパ−ト・シェルドレイク博士はこのことを科学的に解明しようと試みたのです。 通常は、目に見える「物」に還元して現象 を考察するのが科学的な態度だといわれています。しかし、ルパ−ト・シェルドレイク博士の理論は、そういうアプローチとはまったく異なる
ものでした。彼は何度か同じような物事が起こると、そういう出来事の起こる「形の場」ができ、この「形の場」に共鳴すると、同様の出来事が再び起こりうると考えました。このときの「形の場」とは、エネルギー的な情報ではなく、たとえば家が建てられるときの設計図のよう
なものである、というのです。これも一種の「共鳴」の理論と考えられます。音だけではなく出来事も共鳴するというのが、シェルドレイクの 理論なのです。このような出来事の場を彼は「形態形成場」と名づけ、同様のことが起こることを「形態共鳴」と称したのです。この説は『ネ
イチャー』から酷評されたにもかかわらず、ニューサイエンスを支持する人たちからま絶賛され、賛否両論が巻き起こりました。従来の科学の範疇を超えた奇抜な発想ではありましたが、今まで謎とされてきたさまざまな事実が、この理論をもって考えると説明がつく
のです。よく例に出されるのが「グリセリンの結晶」の話です。ダイナマイトに使用されるグリセリンは約250年前天然脂肪から初 めて抽出されてから何十年もの間、結晶をつくることはありませんでした。十九世紀初めのある日、ウィーンからロンドンまで運ばれる途中で
一樽のグリセリンが、なぜか突然結晶をつくりはじめたのです。それからしばらくたつと、まったく離れた場所にあった他のグリセリソも結晶 を作り始めたのです。今では、グリセリンは17℃以下で結晶するのは常識となっています。これは どう解釈できるのでしょぅか。
何らかの理由で結晶するとい「形の場」が一度できると、全世界のグリセリンは「形の場」に沿って結晶するようになる、というわけです。
このような現象はグリセリンに限らず、他の多数の物質でも起こっています。
世界のどこかで偶発的にせよ一度結晶化した物質は、その後はあたりまえのように容易に結晶化するようになるのです。シェルドレイク博 士が唱えた「形態共鳴」の理論について、その真偽を確かめよぅと、イギリスのテレビで公開実験が行われました。 まず、二つのかくし絵が
用意されました。一見意味のないまだら模様に見える図柄の中に、ある絵柄がかくされています。一つは、帽子をかぶった女性の姿、もう一つ は、ロひげをたくわえた男性の顔の絵です。そのうち一方の正解だけを、テレビで放映します。
このテレビ放映の前後に二つのかくし絵の認識実験を行い、解答がテレビで流される前と流された後で、正解率がどのように変化するかを 調べようというのです。もちろん、二回の認識実験の参加者にはそれぞれ別の人たちが選ばれ、テレビ放映後の実験に参加する人は、テレ
ビ放映を見ていませんでした。二つのかくし絵のうち、どちらの正解がテレビで流されたのかも知らされていませんでした。テレビで正解が流されたひげをはやした男の絵柄のほうが、もう一方の女性の絵柄にくらべて、正解率が各段に高くなったのです。念には念を入れて、テレビ放映があったイギリスとアイルランド以外の国のデータをとりましたが、正解率は、放映前にくらべ、三倍にの
ぼったのです。この結果は、次のようなことを物語っています。多くの人が認識したことは、それをまったく知らない人でも認識しやすく なるということです。かくし絵の正解を認識するという「形の場」ができたために、正解率が上がったのだと解釈できるのです。シェ
ルドレイクの理論からすると、たとえば遺伝という現象も、容貌が似るという遺伝子情報だけではなく、「形の場」という要素が加わって起こ ると解釈することができます。この他にも、シンクロニシティと呼ばれる奇妙な偶然の一致について、またユングが唱えた集合的無意識や元型
ということについても、この理論で解釈が可能です。いったん「私にはできない」という形の場が作られると、現実はその過去にひきずられま す。たった一度の失敗を気にしてくよくよして思い悩んでいると、形の場が巨大になり、同じような失敗をしてしまいます。心配したり不安に
思わないこと&起こってもいないことを気にしないこと。何をしても成功する人は、「私はできる、成功する」という確個たるエネルギ−の場 を自分の中に築いています。勝ち馬にのるとかツキをいただくというのは、この「形の場」の中にいれていただくということに・・・。シェル
ドレイクの理論で大切なのは、二度できた「形態形成場」の伝播は、いかなる空間的、時間的隔たりをも超えて起こるとされていることです。 すなわち、「形の場」ができれば、瞬時に他のいかなる場所にも影響を及ぼすのです。
これは、一瞬で世界は変わるということでもあります。
☆ 清潔さと水と稲作農業の話
米国のペリー等、幕末日本にやってきた欧米人は、口をそろえて日本の清潔さを称えています。イギリスの新聞『ザ・タイムズ』は、「とにか く、農園、道路、家屋、庭園などあらゆるものがきちんと整っていること、清瀬であることが日本の特徴である」(一八六一年一一月一日)と
報じている。ところが、その清潔さを作ったものの正体が、彼らにはわからない。一八六一〔文久元)年から一〇年間日本に居住したイギリス 人のブラックは、「稲作は、我々の知る限り一番汚い労働で、どの段階でも農民は、水か泥の中で働く。……たしかに、数代にもわたって手が
入れられ豊かになった土地は、すべての人々から賞賛される方法で耕作されている。だが、ひとつだけ、肥料のやり方(家畜や人間の屎尿を直 接散布すること)だけは不快である。このため、一年のうち数カ月は、楽しみながら田園を散歩することができない。この肥料のやり方が最善
でないことは、そこからできる作物が味も風味もないことが示している」(ヤング・ジャパン)と書いている。また、イギリスの駐日公使で『 大君の都』を著したオールコックも、「田植え仕事だけは願い下げである。男も女も背を曲げて悪臭を放つ泥田の中に膝まで浸って、硬い土壌
の中に何の道具も使わずに手だけで差し込む」と述べている(以上は皆村武一『ザ・タイムズに見る幕末維新』中公新書参照)しかし、こうし た光景は、つい昨日の昭和三〇年代まで、日本各地の農村のどこにでも見られた営みで、一九六〇年代頃までの田植えの風景といえば、その二、
三日前に田んぼの水の中に下肥をたっぶりと撒き、それで、田植えをしたそのままの手でオニギリなんか平気に食べていたというから、糞尿流 れる川で遊ぶインドネシアの島の風景ともそれほど遠くなかったわけです。
「泥にまみれる」という点では、田植えの前に「代かき」 という作業があった。農家は、春になると田んぼの土を掘り起こし、水門を開けて田んぼに水を張ってから、その土をグチョグチョになるまで
引っ掻き回して小さく砕き(耕運という)、それを平ら(均平)にした後で、田植えを行なうのである。では、この「代かき」の作業は、何の ために行なわれるのか。まず、耕運によって、土に通気のよい隙間を与えながら雑草の根を切り、それを土中にひっくり返して肥料とし(緑肥)
、土をかき回すことによって、土の粒子が大きさ順に沈降していくようにする。大きな粒が先に沈み細かな粗が表面に残り、水田の土は、水漏 れしにくくなるとともに、きれいな層をなす濾過装置になるのです。ところで、このとき気づくのは、耕転に取りかかろうとしたときは、
畑と同じく褐色や赤や黄色だった土の色が、代かきを行なうときには灰色に変わっている点である。それゆえ、代かきすると「泥だらけ」にな る。これを西欧人は「Shit!」と叫んで嫌ったわけだが、この変化は、酸化第二鉄から酸素が奪われ、第一鉄イオンになって水に溶けた結果で
ある。つまり、酸素がいっぱいあるときは、土の中の鉄分は水には溶けず、褐色や赤や黄色をした酸化第二鉄として存在する。しかし、田んぼ に水が入れられて酸素が欠乏すると、第二鉄は、土中のバクテリアや有機物に酸素を奪われて、第一鉄イオンとなって水に溶け出すために、土
は灰色に変化するのです。
やがて田植えが終わる頃にもなると、水の中の田んぼの土は、その表面のわずか数ミリメーターの部分だけが、ぶたたぴ赤黄色に戻っていく。なぜなら、水中とはいえ、やはりわずかながらも大気中の空気が水の中に絶えず入ってきて、表面の土をふ
たたび酸化するからです。こうして、前にも述べたように、田んぼの土は、表面の薄い好気層とそれ以下の嫌気層の二層構造を形成することに なります。水田と畑の違いは、言うまでもなく、湛水するか否かにありますが、この湛水によって生まれる、好気・嫌気の二層構造こそが、イ
ネへの養分補給を絶妙かつデリケートなものにする。そこで思い出していただきたいが、硝化菌と脱窒菌とリン酸蓄積細菌との競合関係、あち らを立てればこちらが立たずの関係は、下水処理の最もむずかしい勘所で、それとまるまる同じ構造が、水田におけるイネの栄養補給に関して
も現われてくるのです。下水処理の目的は、有機物の分解を早めて、アンモニアを速く窒素ガスにしてしまったり、リン酸蓄積菌が溜めた リン酸を、薬剤を投入して擬析させて、それを取り除くことであり、これに対し、水田の場合は、有機物の分解・発酵を抑えながら、除徐に徐
々に作物に無機栄養塩を吸収させていく、という点でまったく対照的です。それを効果的に実行するのが、好気・嫌気の二層からなる水田 の土壌であり、この土作りの緻妙なさじ加減は、監視機械がズラッと並んだ化学工場にも勝る、農家の腕の見せ所なのです。灌漑を知らず、自
然の降雨完水のみに頼った畑仕事しか経験したことのない幕末の欧米人にとっては、こうした水田耕作の生化学的な機微はわからず、彼らは、 ただ見た目だけで「臭い」「汚い」と言って日本人を差別していたのです。
最近の環境経済学では、「持続可能な開発」をキーワードにしている。
資源略奪型の「カウボーイ経済」ではなく、かといって一切の経済開発も化石燃料の使用もストップして原始生活に戻るのでもなく、いつまで も人類がこの地球上で豊かに暮らしつづけていけるような「持続可能な開発」が必要だということが、国連の会議などでも盛んに強調され、そ
んな都合のいいことが可能なのかと眉に唾をつけたくもなるが、実はこの点でもこの水田の構造は魔法の役割を果たすのでは・・・・。湛水を しないで天水に頼る欧米の畑作では、いわゆる「三ぼ式農法(三年に一度土地を休ませる)」に典型的に見られるように、農地と休耕地とを使
い回ししながらでなければ使い続けられない。つまり、畑では二〜三年同じ作物を栽培すると収量が急激に減少する連作障害(いや地現象)が 発生する。一方、水田では連作が可能である。これは、水田は冠水されるので、有害生物の種類と数が少なくなることや、土壌中の有害な物質
が水によって洗い流されるためと考えられています。古くから「イネは地力でとれ、麦は肥料でとれ」と言われるが、これは水田では冠水によ って有効化する土壌中の養分が多くなるためで、イネが灌漑用水中に含まれる栄養塩を吸収して育つことによって、水田は水質浄化機能をも果
たしているのである。実際、水田から流出する灌漑用水中の栄養塩の濃度は流入する灌漑用水中のそれよりも低くなることが報告されている。 それゆえ、イネは肥料を与えなくても、通常の八〇パーセント程度の収量を得ることができる。実際アジアではまったく肥料を与えないで同じ
場所で、一〇〇〇年も収穫を続けている水田もあり、これに比べて畑では有機物の消耗が激しく、肥料無しでは高い収量を得ることはできない のである。 その収穫量は、小麦などの比ではなく、日本の水田は、奈良時代にすでに収量が一ヘクタール当り一〇〇〇キロを超えていたと言
うし、明治時代の数字でも、ドイツの小麦が一三七〇キロであったのに対し、日本の米はその一・五倍の二一〇〇キロであり、しかも一八八〇 年当時のドイツは、農学者テーヤの指導によって組織的な輪作を取り入れて農業草命が進行していた時期であるのにもかかわらず・・・。一九
九七年の統計でも、世界三大穀物と言われるイネ・小麦・トウモロコシの全世界の産量を一ヘクタール当りの産量で比較した値は、イネが三・ 七三トンであるのに対し、小麦二・五二トン、トウモロコシ二・七三トン。だから、米こそが人類の食糧危機脱出の鍵を握っているのかもしれ
ない。池田勇人のひそみに倣って言えば、「貧乏人は米を食え」か?
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