鉱物の色は、他の物質の色でも同じですが、それに照射される光、あるいは透過してくる光が原因で見られる現象で、光は波の長さの短い電磁波ですが、私達の肉眼で見える光は波長三九〇〇オングストロームと七五〇〇オングストロームの間です。一オングストロームというのはÅという記号で示されるが、一千万分の一ミリメートルのことです。そして、このような目に見える光もその波長によって異なった色に見えます。一番波長の長いのが赤で六五〇〇〜七五〇〇Å、一番短いのが紫で三九〇〇〜四〇〇〇Åで、その他の色はその間の波長なのだが、それは短い方から順に、紫、藍、青、緑、黄、橙、赤と移ってゆく。紫より短いと紫外線で目に見えないし、赤より長いと赤外線となってこれまた目に見えなくなる。太陽光線や電灯の白色光線は、これらの七つの色の混合物なのだが、物質によってはある波長の光だけを吸収して通さないという性質があって、そのような物質に当った白色光線はその色が吸収されて残りの色だけが出てくる。それが物質、鉱物、そして宝石の色となって現われてくる。こういったある波長の光を吸収するのは、多くは鉱物に含まれている金属イオンの働きによるが、また原子の配列の状態から生まれてくる場合もある。ルビ−の赤の原因はクロムだが、エメラルドの緑もクロムである。それはクロムイオンの状態が違うことによって吸収する光が異なっているため、同じクロムでもこんなに違った色を出すことになる。鉄はたいていの物質に含まれるが、実にいろいろな色彩のもとになる。赤、緑、青、黄、黒、褐色など、銅は緑か青だが、時として赤く発色する場合もある。というわけで、宝石は大体その色が決まっていて、それが鑑別の重要な資料になるのだが、簡単に色だけで決定するわけにもゆかない。　昔の宝石屋さんは大ざっぱに、色だけで宝石の種類を区別していたようで、だからルビーとスピネルは同じだったし、ガーネットにトルマリンの色変りのものが入っていたり、あるいは緑のトルマリンもエメラルドの悪いのくらいで片づけられていたのではないかと思う。すこし昔の話ですが、ブラジルでただトパーズというとシトリン・トパーズが出てくるのだという。その代りに煙水晶といわれたのが、スモーキー・トパーズだったりした。本物のトパーズがほしいときはプレシアス・トパ−ズというそうだ。