パワーストーン教室|有名な鉱物

パワーストーン|六月の誕生石ムーンストーン

真珠とともに、六月の誕生石になっているムーンストーン。
「健康・長寿・富」という意味を持っているそうだが、これほどいい意味を持つ誕生石はほかにない。宝石の中ではなんとなく立場の弱そうな石であるから、こんなにたいそうな意味を含めさせられたのだろうか。乳白色の中に浮かび上がる、青白いひとすじの光。雲の切れ間に顔をのぞかせる月の光を思わせる神秘的な石。
　ムーンストーンというのは宝石の名前だ。鉱物的な分類ではない。
日本名が月長石（げっちょうせき）というのでもわかるとおり、長石の一種。

☆自分に合った天然石を探すための特徴分類

• 日本人と月長石ムーンストーン
  ●ムーンストーン
  ヵリウムがほとんどの長石をカリ長石、ナトリウムがほとんどの長石を曹長石という。しかし実際には、中間的なものもある。ムーンストーンもその中問に位置するものなのだ。
  　二成分が混じっていることが、ムーンストーンの光の原因ともなっている。
  　光の秘密を追って、ムーンストーンの内部に迫ってみよう。
  　ムーンストーンでは、化学成分と冷える速度に秘密が隠されていそうである。
  　高温のマグマの中で、カリウムとナトリウムを含む長石の結晶が成長する。そのマグマが冷えて岩石になるとき、その速度がゆっくりだと、カリウムに富む長石とナトリウムに富む長石という、二種の長石が微細に入り混じった混合物ができてしまう。
  　原子のレベルなので、電子顕微鏡で見ないとわからないぐらい細かい話だが、カリウム長石の層とナトリウム長石の層ができて、重なりあう。その分裂した層の厚みが光の波長に近づいてくると、光の反射、回析、干渉の現象が起こり、光と色の原因となる。
  　ムーンストーンのあの不思議な光は、そういう特殊なでき方をした結果なのである。ある決まった方向からしか見えない。それは層が厳密に一定の方向を向いているということを意味している。カットするときは光を放つ方向を選べばいいわけだ。
  ドのものが多い。ムーンストーンの最大の産地はインド。スリランカやメキシコも有名だ。
  　日本でも長野県の木崎湖畔などで採れるが、それは火山岩の中に細かいつぶとして出る斑晶というでき方のもので、あまり大きなものはない。ほんの2ー3ミリである。
  　同じインドで、サンストーンという、ムーンストーンと相対する名前の石が採れる。日本名もやはり日長石（にっちょうせき）。太陽の光のようにオレンジ色に輝くあたたかい色の石である。
  　サンストーンは長石のグループの斜長石という分類の中の、カルシウムを主成分とする灰長石（かいちょうせき）に属する。オレンジ色は鋼や鉄のための色で、良質のものが産出するアメリカのオレゴン州のものは、自然銅による発色だ。
  ルーペで見てみると、サンストーンの中の層に自然銅のつぶがたくさん張りついているのが見える。
  ●ラブラドライト
  　それから、宝石になる長石をもう一種類。カナダのラブラドル半島で見つかった、ラブラドライト。
  一見するとただの黒い石なのだが、ある方向から見ると、あら不思議、七色の光を放つ美しい石である。これも斜長石の中の一つで、主成分はナトリウムとカルシウムが半分ぐらいなので曹灰長石（そうかいちょうせき）という。比較的新しく見つかったフィンランドでは、この石をスベタトロライトと呼んで売り出している。フィンランドでスペクトロライトが発見されたのは一九四〇年代。ロシアとのは境に近いエラマという場所。旧ソ連軍の攻撃を防ぐために溝を掘っていたら、偶然この石が見つかった。現在もフィンランドでは、名産品としてスペクトロライトの宝飾品が売られている。
  　しかし、一定の方向でしか光らないのでは売行きが悪いらしく、細かく砕いたものを集めたモザイクのような細工がなされている。小さなつぶになったものをいろんな方向に向けておけば、どこから見ても七色の光が見えるというのだ。小さいものは指輪、大きいものは掛時計に使われている。ただし、フィンランドでしか販売されていないと思う。
  ●アレキサンドライト
  太陽光や蛍光灯の下では緑色に、白熱灯の下では赤色に。魅惑的な色変わりの性質を見せるこの宝石は、一九世紀前半にロシアのウラル山脈で見つかった。
  　その日は、ちょうどときの皇帝アレクサンドル二世の誕生日であったという。皇帝の名を与えられた赤と緑の二色を持つ石。それはロシアの国旗の色でもあった。今日では　「アレキ」という略称で知られ、高価で人気のあるこの宝石、いったいどんな鉱物なのだろう。アレキサンドライトはクリソベリル、日本名で金緑石（きんりょくせき）という鉱物の亜種である。キャッツアイというのもこの仲間だ。
  　光源によって色が劇的に変化
  　アレキサンドライトはなぜ光源によって色が変わるのだろう‥…・。
  　できるだけ簡単に説明しよう。普通の光には、あらゆる色のスペクトルが混じっている。虹を見るとそのことが実感できる。鉱物はすべての色を全部吸収したり反射したりするのではなく、鉱物によって特定のものを吸収・反射する。我われの目に赤く見える石は、緑など他の色を吸収して赤い色を反射しているということになる。吸収の度合いをグラフに表わす場合、機軸には色の波長を、縦軸には光源に上る吸収の戯さをとる。この場合は、どんな光源のもとであろうと、色が劇的に変化することはない。ところが、アレキサンドライトの場合は、この吸収曲線にところどころピークがあって、曲線があまりなだらかではない。一方、光源から出る光も、すべてのスペクトルが均等ではなくて、弱い光があり、これも曲線に表わすことができる。これを発光曲線と呼ぶことにしよう。
  　発光曲線と吸収曲線が両方ともなだらかであれば、光源を変えても石の色に大差は出ない。
  すべて石に吸収されてしまうことになって、反対色の赤に見える。赤のスペクトルが弱い光源であると、今度は赤色が吸収されて、石は緑色に見えることになる。ほかの石でも、一般的に日光と電灯の下では多少は色がちがって見えるのが普通だが、アレキサンドライトほどの劇的な変化はない。非常に珍しい性質を持つ石だ。こんなに魅力的な石はない、ぜひ手に入れたいと思ってショーウィンドウをのぞくと、その値段の高さに飛びずさり、思わずゼロの数を数え直してしまうほど。
  　アレキサンドライトはたいへんな希少価値、ロシアではエメラルドの鉱山ででるのだが、産出量はエメラルドの何百分の一とも、何千分の一とも。アレキサンドライトは、合成品もかなり出回っている。本物を見分けるのはかなり難しい。天然のアレキサンドライトで一カラットあるような品そのものが希少である。購入にあたっては慎重に。
  ●トルコ石
  アメリカ・アリゾナ州に、スリーピングビューティという鉱山がある。
  　横たわる女性に形が似ていることからその名前がつけられた。スリーピングビューティー、つまり「眠れる森の美女」である。この鉱山で採れるトルコ石は、なんとも美しい、アリゾナの真昼の空の色をしている。空気の悪い日本では考えられない、目の覚めるような鮮やかな空の色だ。一〇〇年の眠りから覚めた眠り姫も、この空の色に心を奪われたかもしれない。アリゾナ州ではスリーピングビュ−ティーとキングマンという鉱山がトルコ石の有名な産地で、トルコ石は州の石にもなっている。
  　緑と青の色むらが縞模様になっているものを、つまくカットしたりしても、味わいのあるおもしろい宝石になるだろうに。宝石の個性が認められる時代が、いつかやってくると信じたい。
  最後に、究極のトルコ石の紹介をしよう。トルコ石というと一般的には不透明な、陶器のような石だというイメージが定着している。しかし、実は例外的に細かい結晶が出る。それは透明感があって、きらきらし美、本当に美しい結晶なのである。これの大きなものが大量に出れば、オリエンタルなブルーの魅力的な宝石となって、サファイアやブルートパーズに迫る人気の宝石となりえたかもしれない。しかし、一ミリ以上の大きな結晶はなく、めったに出ないものなので、非常に残念である。
  　ただし、合成では今後できるかもしれない。さて、その評価は……？
  ●ハーキマー・ダイヤモンド
  名前からすると、ダイヤモンドの一種かと喜んでしまいそうだが…‥永晶なのである。アメリカ、ニューヨーク州のハーキマーという地名にちなんでこの名がつけられた。無色透明、全体はころつとしたかわいらしい形。しかし、ダイヤモンドという名を与ぇられるだけのことはある。まるで研磨したかのようなシャープな結晶面は、キラリと鋭い輝きを放つ。ハーキマー・ダイヤモンドは堆積岩の中で見つかる。ハーキマー・ダイヤモンドは一個だけばつんとあるのではなく、その層にびつしり詰まった形で発見される。ハーキマーの層が見つかるとその年はたくさん市場に出回るが、見つからないときは本当に希少価値が高い。まさに水物、九七年から九八年にかけてはたまたま当たり年だったが、こういうときに手に入れておくのが賢明かもしれない。ハーキマー・ダイヤモンドが母岩についているものを購入したい場合は、少しばかり知識がいる。はーきまー・ダイヤモンドをすべて「ナチュラル」と称して売るのが業界の常識だ。しかし、正しくは　「ナチュラルな状態を復元した」ものなのだ。つまり、接着品である。ハーキマーの母岩は珪化作用を受けたドロマイト（苦灰石くかいせき）という岩石。ドロマイトにぼこぼことあいた大小の穴の中に、ハーキマーはくつついている。普通の水晶のように根から生えた形ではなく、ほんのわずかな一点だけで母岩とつながっているだけなのだ。だからちょっとした衝撃でぼろりとはずれてしまう。しかも、母岩は粘りづよくて硬い。ハンマーで叩いたぐらいではビクともしない。超大型ハンマーや電気ドリルで採掘する。そのとき、衝撃でぼろりとはずれてしまう。

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