元気のでる館 > 癒しの館 > 弘法大師空海の三密修行 人間意識と究極の成功 空海がもたらした「三密修行」が究極の成功の扉となる ●究極の成功とは　「即身成仏」　である 　では、意味のある成功、「究極の成功」とは何が？ 「成功」という言葉を聞くと、多くの人はまず「社会的に認められること」、つまり「地位や名誉や財産を得ること」をイメージされることと思います。 　しかし、価値観が多様化する中で、単純にそれを追求して生きることに疑問を持ち、精神的な価値を探求し始める人も徐々に増えてきました。 　ここで問題となるのが、「精神性を度外視して、金銭や権力の充足に走る」、あるいは「物質的安定を無視して精神性に走る」という二極化現象です。これらは両方とも間違っています。どちらか一方のみを選ぶことは安易な道であり、それによっては、人は本当に成長することも進化することもできません。精神性と物質性を融合させ、それによって、人間に成長と進化をもたらす技術体系が必要となります。 　愛と豊かさの中で、喜びの中で、人間性が高まっていくこと。精神性と物質性の両方のバランスを取りながら、物事を進め、人生を歩んでいくこと。これこそが、人間の意識が開花し究極の成功に至る道であることを、既に千二百年前に見抜いた人物がいました。 その名を弘法大師空海（七七四〜八三五）。彼は、当時の最先端の文化「密教」を中国から日本にもたらしました。そして当時の日本の宗教界、仏教界に衝撃を与えました。なぜなら空海はこのように宣言したからです。 「あの世で幸せになろうと思うな。生きながらこの世で幸せな人生を送ることが大切だ」 「人はこの世で、生きたこの身このまま仏となって生きることができる」と。また空海は「煩悩（欲望）こそ悟りの種である。それゆえ煩悩を嫌ってはならない」とも説きました。それまでの日本の仏教においては、煩悩を否定し、また「人が仏になるには何回も生まれ変わり、途方もなく長い時間が必要である」と説いていました。空海は真っ向からこれを否定したのです。この肉体を、そしてそれに付随するあらゆる煩悩を抑圧することなく、悟りの境地に入ること、「悔いなく生き、悔いなく死ぬことができる人間になること」それを「即身成仏そくしんじょうぶつ」と空海は名づけ、「これを実現することこそが生きる意味である」と説きました。　それはいかにして可能なのか。その実践を空海は三密（さんみつ）修行と呼びました。 身密しんみつ　仏や誓願を象徴する形を手指で作ること　（「印を組む」という） 口密くみつ　仏を象徴する言葉を「真言　（マントラ）といい、これを唱えること 意密いみつ　心に仏を想い描くこと 　この三つを一つにすること。 「身密、口密、意密。すなわち身体の秘密と言葉の秘密と心の秘密が一つになったときに人は成仏する。即身成仏はこの三密修行によって起こる」 　と密教は説いています。ここで言う「秘密」とは「働き」　のことです。身体の働きと言葉の働きと心の働きを整えることが三密修行の本質であり、それが一つになったときに人は成仏する、すなわち、この世で幸せに生きることができます。これこそ「究極の成功」と言えるのです。この働きが間違っていたり、ばらばらであるとき、人は不幸を選択してしまいます。 即身成仏。それは内なる自分自身に従って正直に生きることを意味しているのです。 　本当の自分自身を生きること。ですから悟りとは得難いものでもないし、特別なことでもありません。自分が正直に生ききることが成仏なのです。 正直に生ききれないような社会のシステムの中で私たちが生きていることは事実です。 しかし、人間には二つの道があります。「依存と抑圧の道」と「愛と分かち合いの道」の二つです。どちらを選ぶかがその人の未来になるのです。

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